昭和から平成初期を生きた大西民子の短歌には昔懐かしい光景を詠んだものがあります。それらの歌は暮らしに密着したものが多いため、火鉢や算盤といった昔ながらの道具も登場しています。
今回の展示では、「家庭生活」「職場・街中」「着物」と三部構成で民子が詠んだ歌の自筆原稿や所有品等を展示します。民子の歌を通して、懐かしい「くらしの想い出」をご紹介します。
大宮ゆかりの歌人・大西民子の父・菅野佐介(1888~1945)は、岩手で刑事として活躍し周囲の人々から「シャーロック・ホームズ」と言われていました。
職場では鬼刑事と言われるほど厳しかった佐介も、家では子煩悩な父親で特に次女の民子のことを可愛がり、民子もそんな父を尊敬していました。民子が教員として就職してまもなく佐介は急逝しますが、民子は歌に父の姿を描き続けました。
今回の展示は、敏腕刑事としての佐介の活躍について詠んだ歌「みちのくのシャーロックホームズ」、受験生の民子を見守る父の姿を描いた「民子の進学」、そして民子の父への挽歌「父への想い」の3部構成で、自筆資料や、父との日々にまつわる所持品などを展示します。作品を通して、民子の家族への深い愛情を感じていただければと思います。